今回は「ほぼ日手帳」で有名な株式会社ほぼ日の財務・企業分析をしてみます。
なお、株式会社ほぼ日(以下、ほぼ日)は糸井重里氏により設立された企業です。(前身は有限会社東京糸井重里事務所)
主力商品である「ほぼ日手帳」は2001年に販売が開始されました。
私も毎年買い換えて、5年以上も愛用しています。(ここ数年は、ほぼ日weeksを愛用中です)
最近このような書籍も読みました。
貸借対照表と損益計算書
2018年8月期の有価証券報告書の情報をもとに、比例縮尺財務諸表を見てみましょう。
2018年8月期の売上高は約50億円、総資産は約47億円。よって総資産回転率は約1.07倍です。そして自己資本比率は約71%と非常に高い比率になっています。 流動資産の内訳ですが、現金が約20億円とキャッシュリッチな状態です。それと同時に、商品と売掛金の金額が多額です。その理由としては、翌期(第1四半期)の販売に向けた準備の影響かと思います。
また売掛金に関しては「ロフト」が大口の顧客になっているようです。
さらに、商品と売掛金の四半期の推移を調べてみました。
1Qの頭から手帳の販売が開始されるので、その前の期の4Qに商品を大量に準備して出荷が始まります。売掛金は少しタイミングがずれて、1Qにピークがきて金額が多額になります。
単位 百万円 |
17年8月期 4Q |
18年8月期 1Q |
18年8月期 2Q |
18年8月期 3Q |
18年8月期 4Q |
19年8月期 1Q |
商品 | 809 | 626 | 472 | 437 | 858 | 589 |
売掛金 | 654 | 958 | 397 | 188 | 816 | 933 |
売上高の約6割は「ほぼ日手帳」関連の売上です。そして季節による変動もあります。下記は有価証券報告書の「事業等のリスク」から引用したものです。
第1四半期で売上の約4割を稼いでいることがわかります。対して、第3四半期は大きく落ち込んでいることもわかります。ですから、第1四半期の売上確保は非常に重要です。 私は最初、決算月が8月というのは少し違和感がありました。しかし、毎年9月1日には来年1月始まりの手帳の発売が開始されます。そのことを考えると腑に落ちますよね。
この項目での最後に部数の推移を見てみましょう。右肩上がりに増加していることがわかります。また2019年8月期の最終的な部数は確定していませんが、公式の発表資料を読むと85万部の着地と予想されています。
キャッシュ・フロー計算書
貸借対照表の商品や売掛金の金額が増えることによって、キャッシュ・フロー計算書にもその影響が出てきます。
有価証券報告書からキャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」を抜き出してみます。営業活動によるキャッシュ・フローとは本業でどれだけキャッシュの流れがあったか(増えたり減ったりしたのか)を示しています。
売掛金に関しては「売上債権の増減額」に影響が出てきます。また、商品に関しては「たな卸資産の増減額」に影響が出てきます。 それが△(マイナス)になっているということは、キャッシュが流出している(減っている)ことを示しています。
例えば売掛金は商品が売れて、売上を計上することでどんどん増えていき、その売掛金を回収できれば当然売掛金は減ります。売掛金が増えているということは、裏を返せば「回収できていない」ということです。
また商品に関しても、商品を作るには様々なコストがかかっています。商品が売れると、その原価は損益計算書の「売上原価」に移動することになりますが、これは説明が長くなるので今回はあまり触れません。しかし、まだ売れていない商品の原価は貸借対照表の資産に残り続けることになります。商品は売れないことには売上に計上できませんし、最終的にキャッシュとして手にすることはできません。
セグメント
ほぼ日の事業セグメントは「単一セグメント」であることが有価証券報告書に記載されています。 ただ決算説明会資料なども合わせて読んでみると、手帳のほかにも様々なことをしています。
決算説明会の資料も見てみましょう。
特に面白そうだったのが「ほぼ日の学校」です。
ほぼ日の学校
「何を教えてるんだろう?」と思いませんか?例えばこれです。
テーマは「歌舞伎」です。面白いです(笑)基本的には現地でのライブ講義で、すでに修了した講座に関してはオンラインクラスにて視聴できるようですね。
まとめ
最後に行動指針を引用します。
さらに冒頭で紹介した書籍からも引用してみます。
じぶんにも他人にも「やさしく」あることが第一なんです。
「すいません、ほぼ日の経営。」P.153から引用
うちはあくまでも「やさしく」が先で、「やさしく」の人が「つよく」ならないといけないと思っています。
「すいません、ほぼ日の経営。」P.156から引用
ほぼ日手帳には何か他社の手帳とは違う雰囲気を感じています。それが「やさしさ」なのかはわかりませんが、惹きつけられるものがあるのは確かです。そうでなければ何年も続けて使っていないと思います。
私も今から、来年のほぼ日手帳を何にするか楽しみにしています。
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