【財務分析】マツモトキヨシとココカラ統合【ドラッグストア】

【財務分析】マツモトキヨシとココカラ統合【ドラッグストア】

今回はマツモトキヨシとココカラファインの経営統合を通してドラッグストア業界について見ていきます。

2020年1月31日、株式会社マツモトキヨシホールディングス(以下、マツモトキヨシ)と株式会社ココカラファイン(以下、ココカラファイン)の経営統合(2021年10月予定)が正式に公表されました。
詳しい内容はマツモトキヨシのニュースリリースをご覧ください。

この統合によりドラッグストア業界の順位が変わることになります。
まずはそこから見ていきましょう。
なお、マツモトキヨシとココカラファインの資料は主に2019年3月期の有価証券報告書から引用しています。

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ドラッグストア業界

直近の決算におけるドラッグストア業界の売上高を基準にした順位です。

順位 企業名 売上高
(億円)
1 ツルハHD 7,824
2 ウエルシアHD 7,791
3 コスモス薬品 6,111
4 サンドラッグ 5,880
5 マツモトキヨシHD 5,759
6 スギHD 4,884
7 ココカラファイン 4,005

単純にマツモトキヨシとココカラファインの売上高を合算して改めて順位を見てみましょう。

順位 企業名 売上高
(億円)
1 マツモトキヨシHD
ココカラファイン
9,764
2 ツルハHD 7,824
3 ウエルシアHD 7,791
4 コスモス薬品 6,111
5 サンドラッグ 5,880
6 スギHD 4,884

このように一気に業界1位に躍り出ることになります。

貸借対照表と損益計算書

マツモトキヨシ

売上高は5,759億円、総資産は3,183億円、総資産回転率は1.81倍です。

ココカラファイン

売上高は4,005億円、総資産は1,727億円、総資産回転率は2.32倍です。

2社の総資産回転率を比較すると、ココカラファインのほうが少ない資産で多くの売上を達成しているので、資産を有効的に活用しているようにみえます。

マツモトキヨシ&ココカラファイン

単純合算なのであまり正確ではないですが、売上高は9,764億円、総資産は4,910億円、総資産回転率は1.99倍です。
2社の資本構成に大きな違いはないので、統合後の財務諸表もさほど変化しないと私は予想しています。

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セグメント情報

マツモトキヨシ

セグメント情報を見ると、小売事業・卸売事業・管理サポート事業の3つの事業に分かれていることがわかります。

メイン事業は小売事業かと思います。 卸売事業にも3,800億円が計上されていますが、これは最終的に「消去」されています。 これはなぜでしょうか。

そこで事業系統図を見てみます。

すると、グループ内で商品を卸していることがわかります。 グループ内の取引を売上高に計上するわけにはいきませんから、その分は連結財務諸表を作成する段階で最終的に消去することになります。

ココカラファイン

ドラッグストア・調剤事業と介護事業に分かれています。

店舗数

ここでまたドラッグストア各社の直近の店舗数を比較してみましょう。

順位 企業名 店舗数
1 ツルハHD 2,082
2 ウエルシアHD 1,878
3 マツモトキヨシHD 1,654
4 ココカラファイン 1,354
5 スギHD 1,212
6 サンドラッグ 1,147
7 コスモス薬品 993

仮にこの店舗数を合算すると3,008店舗となり、店舗数でも1位となることがわかります。

減損損失

店舗数に関してはこのまま増え続けるのではなく、不採算店舗などは閉鎖し、逆に新たに出店もしています。不採算店舗などは今後の利益予想などを勘案して、損益計算書上で「減損損失」を計上することになります。

マツモトキヨシ

ココカラファイン

統合へのスキーム

今後はまずココカラファインの第三者割当増資によりマツモトキヨシがココカラファインの筆頭株主になる予定です。

そして、ココカラファインはマツモトキヨシの持分法適用会社となります。

持分法適用会社になると損益計算書では「持分法による投資損益」が計上されてきます。ですから、2021年3月期決算ではマツモトキヨシの連結損益計算書の「持分法による投資損益」にも注目したいと思います。

2020年3月期 通期業績見通し

各社「決算短信」には通期の業績予想が記載されています。
2020年3月期の業績見通し(売上高ベース)は下記のようになっています。

マツモトキヨシ 6,000億円
ココカラファイン 4,090億円

2社で1兆円を超える予想です。
しかし、ご存知のとおり、新型コロナウイルスの影響で1月の売上に影響が出てくると思います。

下記のマツモトキヨシの第3四半期の決算説明会資料では「春節需要(インバウンド)で前年超えの予想」をしていました。

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まとめ

経営統合は2021年10月なので、現時点(2020年2月)ではまだ先ですが、マツモトキヨシがココカラファインの筆頭株主になる日は今春に近づいています。

売上高、店舗数ともに業界1位になる企業に、業界内の他の企業がどのように対応するのか、ドラッグストア業界の今後が気になるところです。

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