自己資本利益率はROE(Return On Equity)とも言われ、収益性の指標になります。
計算式と目安
分母には「自己資本」を使い、分子には「(親会社株主に帰属する)当期純利益」を使います。
「自己資本を使って、どのくらい利益を生み出したか」の指標になります。
自己資本とは投資家が出資した資本ですよね。そして原則「返済義務のない」資金です。しかし、どうして投資家が資金を出資するのかといえば、インカムゲイン(配当金など)やキャピタルゲイン(株価の値上がり、株式の売買による収入など)で利益を得るためです。
ですから、投資家からみれば、このROEという指標は非常に気になる重要な指標になります。
そして分子の「当期純利益」についてです。当期純利益は損益計算書での段階的な利益では一番最後の利益になります。最後の利益ということは債権者への利息の支払いなど(営業外費用)が終わった段階の利益です。利益の配分の順位としては投資家よりも債権者(企業に資金を貸している銀行など)が優先されます。
なので、最後の当期純利益を基にして、そこから配当金などの支払い(株主還元)が行われるわけです。となると、自己資本を使って、どのくらい利益が生み出せたかを判断するには「当期純利益」を当てるのが最適かと思います。
デュポンシステム
自己資本利益率の計算式は次のように分解することができます。 これは米国のデュポン社が考案したことからデュポンシステム( デュポン式・デュポン分析)と言われています。
このように分解することで「何が要因で」自己資本利益率が上下したのかわかるようになります。
構成要素 | 計算式 |
①売上高当期純利益率 | 当期純利益÷売上高 |
②総資産回転率 | 売上高÷総資産 |
③財務レバレッジ | 総資本÷自己資本 |
「前期と当期のROEを比較して、ROEは上昇している!改善してるぞ!」
「ROEが〇%」という数値だけ見れば、そう思うかもしれません。しかし、注意しなければいけない要素があります。それは「③財務レバレッジ」です。
財務レバレッジが高いということは借入金などの「他人資本が多い」ことになります。ですから、他人資本を増やせば財務レバレッジが上昇し、結果的にROEが急激に上昇する場合もあります。また、一見、変化がないように見えても、分解すれば中身に変化がある場合もあります。
ひとつの例を見てみましょう。
ROE | ① 売上高 当期純利益率 |
② 総資産 回転率 |
③ 財務 レバレッジ |
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1年度 | 36% | 20% | 1.2 | 1.5 |
2年度 | 36% | 15% | 1.2 | 2.0 |
1年度と2年度のROEは同じです。
しかし、デュポンシステムで分解してみると、2年度は財務レバレッジが上昇していることがわかりました。これは自己資本と他人資本のバランスが変わった(他人資本が増えた)ことになります。さらに、分解してみてわかったことは売上高当期純利益率(収益性)が低下したことです。
このようにROEの数値が同じであっても、中身の要因は様々です。ROE単体の数値に一喜一憂することなく、デュポンシステムで分解することによって真の要因を調べることをオススメします。